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大乗仏教に於ける最高、最深の経典は『華厳経』であり、その根本の教えは法界虚空界三昧(ほっかい・こくうかい・さんまい)であり、構造としては法界〔一一切〕虚空界三昧〔無〕であるので一一切無と分かる。虚空界三昧は無と相応し、又た三昧でもあるので法界虚空界三昧は法界禅とも言い表すことができる。

『華厳経』の本来の教説である法界虚空界三昧を、即ち法界禅をそのまま直説している思想、思想史を中国五台山系華厳思想・思想史と呼び、初祖は霊弁、第二祖は解脱、第三祖は大成者の李通玄である。一方、従来華厳思想の大成者とされている法蔵は五教判で以て、又たその師の智顗は三教判を使って、唐王朝という中央権力国家に取り入るために、さらには当時勢力を拡大し唐の朝廷にまで押し寄せてきた禅宗を排除せんとして本来の華厳思想の法界禅を、即ち一一切無を法界〔一一切〕と禅〔無〕に切り離し、法界〔一一切〕を円教の華厳とし、禅〔無〕を頓教として禅宗を貶め、しかも〔一〕を皇帝に、〔一切〕を民衆に当てはめて〔一〕なる皇帝を絶対化かつ神秘化するために『楞伽経』の「一心=如来蔵」の思想を取り入れて唐王朝を支える華厳思想に改悪してしまったのである。本来の華厳思想は一切平等の仏国土建立を本願とするものであるにもかかわらず。この智儼・法蔵・澄観・宗密らの華厳思想・思想史を中国終南山系華厳思想・思想史と称する。


Institute of Kegon Studies / 華厳学研究所